SEから保険会社の営業への転職?丨異業種転職のススメ


それまでやってきた仕事とは全く別の世界に飛び込む。これは想像以上に勇気が必要な選択だ。当然、歳を重ねれば重ねるほど難易度は上がるだろう。
前職での経験が生かせないため、ゼロからの再出発になる。始めは新卒同様の苦労を強(し)いられ、戦力になるまでは勉強することも欠かせない。
なにより、自分の適性と仕事がうまく合わず、すぐに辞めることになってしまうのでは?
……そういったネガティブな不安は尽きないだろう。それが異業種への転職だ。
しかしはたしてその通りだろうか? 異業種への転職は本当にハイリスク・ローリターンな愚行なのだろうか?
私としては、異業種転職者に「その転職は失敗だったか」と直接聞いた者はほとんどいない見立てだ。どうだ? 聞いたことがないだろう?
今回は私の部下二人を異業種の転職を行った者の元に向かわせた。〈SEから保険会社の営業〉という、変わった経歴の持ち主だ。
彼の話を聞いて、異業種への転職がどういうものなのかをその片鱗だけでも知ってもらいたい。そして、諸君の選択肢をわずかでも広げることができれば、私としてはこんなに嬉しいことはない。
ぜひ色眼鏡を捨てて読んでもらいたい。健闘を祈る。
はいどーもー、エージェントPことぺーちゃんで〜す!

急になんだよ。なんでそんなにおちゃらけてるんだよ。
いやだってボスの前置き重いわ長いわで爆睡待ったなしっスよ〜。要するに「異業種転職した人から話を聞いてこい」ってことでしょ? そう言えって話ですよ〜。

【取材者データ】岡本さん(仮名)
年齢:39歳
性別:男性
前職:SE
現職:保険会社 / 営業
あ、岡本さん! 申し訳ありません、本日はお忙しい中ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。
SE業界に漂う漠然とした不安とは?

はい、SE(システムエンジニア)に12、3年従事していました。
12年! 離職率の高いIT業界では長い方ですよね。社内ではベテラン扱いになるのではないですか?
そうですね。ベテランとまではいいませんが、中堅の社員ではあったと思います。生命保険関連のシステム構築に関わっていました。
転職後は保険会社の営業職になられたんですよね。保険会社ということで、保険のシステム構築の際に勉強されたことが役立ったりしたんですか?
うーん、基礎的な部分だけですね。役に立たなかったというと嘘になりますが、あくまで導入部分だったと思います。
そこら辺の理由はあとで詳しく聞くとして、まず僕の勝手なイメージなんですけど、やっぱりSEって忙しいんですか?
忙しいですね(笑)終電までの残業も当然のようにありますし。
驚いたのが、50代くらいの上司も終電の時間まで働いている日があったことです。私もこのままだとそういう50代になるのかなあという漠然とした不安はありましたね。
それは身の振り方を考えてしまいますね……。転職の理由はそういった就業時間が大きかったのですか?
それももちろんありますが、その他にも2つ理由がありました。
転職を検討した2つのきっかけ
1. 体力的な不安
一つ目は先程言った通りの体力的な不安ですね。今はまだ体力的に問題ないので0時頃まで働くことも可能ですが、50代で同じことができるかなと考えたときに不安だったんです。
どんな年齢でも朝から0時近くまで働くのはおかしいですけどね……。
2. 能力的な不安
能力的な不安ですか? 自分のスキルに限界を感じたとか?
ざっくり言うとそうですね。
転職前に大きなプロジェクトのリーダーをやったら、精神的・体力的ともにかなりきつかったんです。自分のSEとしてのスキルに頭打ちを感じたというか……。
そうなると、転職先で同業を選ぶということはなかったわけですね?
自分が本当にやりたいこと

とはいっても、転職を考えたときはやっぱりSEを真っ先に考えましたね。ある程度実績もあったので、入りやすいでしょうし。
でも、業界を変えないことには本質的な解決にはなってないと思ったんです。
それは分かるんですけど、じゃあ別の選択肢として、なんで営業職にしようと思ったんですか?
どうして “営業職” ?
それは、対面のコミュニケーションがしたいと思ったからです。
対面のコミュニケーション……。お客様の顔が直接見れる業種を選びたかったということですよね。
この「異業種への転職理由」というのは多くの転職希望者が知りたがっているところだと思いますので、もし具体的なエピソードなどがあれば聞かせていただけませんか?
わかりました。この話はまず、私の父が亡くなった時の話をしなければなりません……。
父が亡くなったときに、ラグビー部の旧友が葬儀に駆けつけてくれたんです。頼んでもないのに来てくれたんですよ(笑)私はそれにすごく救われたという実感があって……。
SEのようなシステム構築は不特定多数の見えない利用者の満足度を上げる仕事です。でも葬儀の時の経験を振り返ると、私自身としては、少数の人でもいいので対面の貢献がしたいのではないかと考えるようになったんです。
なるほど、それで対面のコミュニケーションができる営業職を選んだのですね。
どうして “保険会社” ?
契約が決まった後もお付き合いがある関係構築をしたかったんです。保険というのは人生の節目で内容を見直すものなので、契約後も定期的に連絡を取り続けるんですよね。そういう一生涯の貢献がしたいと思ったんです。
とても納得しました。自分の印象的だった体験が転職時の指針になったというわけですね。
今思い起こすとそうですね。父の葬儀、部活の旧友、そういった経験がなかったら、今の職業を選択することはなかったかもしれません。
保険会社の営業になって分かったこと

時間が自由になりましたね。それが最も実感する変化です。
営業職は自由だ!
と、いいますと? 出社時間や退勤時間に余裕ができたということですか?
一応出社時間はありますが、一度会社に行ったらあとは外回りで直帰することが多いですね。今日みたいに仕事中に取材に応じることもできますし(笑)
それは冗談ですよ(笑)
でも、SEの頃は本当に朝から晩までモニターとにらめっこだったので、そのあたりは本当に開放感がありましたね。
つまり、サボり放題というわけですね! ヤスさん僕転職します!!
サボれないことはないですけどね。ただし業績が収入に直結するので、やらざるを得ないですよ。給与体系はSEのころよりよっぽどシビアです。
つまり、全然サボれないというわけですね! ヤスさん僕転職しません!!
そういった意味で、収入が安定しないのはイメージ通りではありますがあらためて再実感したポイントですね。
保険会社の喜びとは?
業務のやりがいといいますか、転職して良かった! と思えるような経験はできましたか?
今年で3年目になるのですが、お付き合いのある方も増えてきました。保険を売るって、売った時は何も起きてない状況なんです。私たちの仕事がはじまるのは、お客さまの身辺に何かあったときです。そのときにお客さまから感謝されることがありまして……。
対面のコミュニケーションの醍醐味ですね! 想像していた一生涯のお付き合いはできそうですか?
はい、おかげさまで「今までこんな話人にしたことがなかったけど……」というふうに言っていただけることもあり、業務内容は本当に満足しています。
SEの頃は絶対に体験できなかった仕事の喜びですね。
SEの頃に体験できなかったといえば、出会えなかった人と出会えるようになった、ということがありますね。顧客は自分で開拓しなければいけないので、これまでの自分では考えられないくらい多くの人と積極的に接する日々を送っています。本当に世界が広がりました。

まとめ 〜異業種転職者の明暗〜
ちなみに、全く未経験の業種に飛び込んだということで、ぶっちゃけ年収は下がった系ですか?
大丈夫ですよ(笑)
SEを辞める最後の年は年収で650万ほどありましたが、転職して半分以下になりました。
そうかもしれませんね。でも、転職に点数をつけるなら100点だったと思ってますよ。
後から考えるとそうですが、いざ転職する瞬間はやっぱり勇気がいる選択だったと思います。当時はどのようなことを考えていましたか?
営業の仕事に就いてから、経営者の方とも接するようになったんですが、彼らって時にすごくバカなんですよね(笑)
バカっていうと語弊がありますが、頭が柔軟というか。新しい世界に飛び込むときは頭を真っ白にして挑戦していくんです。それまでの自分の考えに固執しないというか。
異業種への転職を決めた時、私は頭を真っ白にしてバカになれたんだと思います。そうでもしないと、次の行動に移せませんから。
本当の成功はこれから掴んでいきますよ。まだまだ結果を残せていませんので。自分のやりたかった、やりがいのある環境は幸いにも整ったので、あとはやるだけです!
年収よりもやりがいを重視した転職だったんですね。すごくバイタリティーに満ち溢れた方だ……、まぶしい!
本日は言いにくい話まで明け透けにお話しいただきありがとうございました!
ありがとうございました! ところでエージェントYさん、いま保険て入られてます?
そうですよね。ちょっとこの機会に見直してみませんか?
まあまあそうは言っても一寸先は闇ですからね。思い立ったが吉日ですよ。お見積りだけでもぜひ。